Anthropicの研究者ジャスカ・ゾール=ディクシュタイン氏が、大学院生を前に「人類世の終わり」と題した講演を行った。並べられた数字は4つ。過去10年で学習算力は1,000万倍、AIが単独で完遂できる作業の時間幅は数ヶ月ごとに倍、直近7ヶ月で数学の未解決問題を解き、2030年の計算資源は2025年の1万倍になるという推計である。

4つの数字は何を示すのか
| 指標 | 数字 | 意味するとされること |
|---|---|---|
| 学習に使う算力 | 10年で1,000万倍 | 直線的な延長では捉えられない |
| 単独で完遂できる作業の長さ | 数ヶ月ごとに倍 | 人間の1日分を超えた地点に到達 |
| 数学の未解決問題 | 直近7ヶ月で複数 | 訓練データの外側にも届いている |
| 2030年の計算資源 | 2025年の1万倍(EpochAIの推計) | 現在は曲線のごく初期にあたる |
会場には一流大学の博士課程の学生が集まっていた。講演の途中で、自身の進路についての嘆息が漏れたと報じられている。2年かけて積み上げた成果より、誰かが一度投げた指示の出力が上回る場面がある、という指摘である。
何を変えろと言っているのか
第1に、研究テーマの入れ替えだ。算力の規模で潰される問題を捨て、算力が増えるほど強くなる領域へ移れという。計算資源を積めば解ける問題は、自分の手で解く意味が薄れる。
第2に、安定した職業を前提にしないこと。終身雇用や終身教職のような立場を選べばリスクを避けられる、という発想そのものを疑う。社会全体の再編が起きるなら、基準となるリスクはすでに上がっている。安全を買うために高い成果の可能性を捨てても、保障は手に入らない。
第3に、指数の曲線に乗ること。毎日AIを使い、部下のように扱い、任務の切り出し方と期待の伝え方を練習する。同氏自身は、コードを書く作業をすべて手放したと語る。一方で警告も添えた。文章を書くことは考えることでもあるので、最初の草稿は自分で書く。AIには誤りを探させる。
若い研究者に残された余地はあるのか
講演の後半は、むしろ楽観的である。指数の初期段階では、少数の判断が後年の構造を決める。1980年に2人の科学者が電子メールの標準化を決めたから今の形があり、チャットは規範化が10年遅れたために、いまもアプリごとに分断されている。ハーバー・ボッシュ法は、数十億人を養う肥料と、最も致命的な爆薬の両方を生んだ。
何を研究するか、ある技術を能力と呼ぶかリスクと呼ぶか、公開にするか閉じるか。この段階の選択が増幅される、というのが同氏の主張だ。そして、AIを使いこなす側として成果を一気に伸ばせる時期が来たあと、人間にしかできない方向が残らない時期が来る、と続ける。
よくある質問
Q. 日本でも同じことが起きるのか。
講演は米国の大学院生に向けたもので、日本の雇用慣行を前提にした分析ではない。日本の場合、職務が曖昧なまま採用されることが多く、AIに何を渡すかが個人の裁量になりやすい。結果として差が開く速度は国によって変わる。
Q. 研究テーマを変えるべきなのか。
判断は領域による。計算資源の投入で解ける問題を選べば、外部の資源量が成果を決める。逆に、問題の設定や評価の設計に価値がある領域は、資源が増えても人の役割が残る。
編集部の見解
この講演で実務に持ち帰れるのは、数字そのものより、テーマの選び方の基準だ。自分の作業が算力で置き換えられるのか、算力が増えるほど価値が上がるのか。この2つを毎年問い直すだけで、選ぶ道は変わる。
もう1つ、最初の草稿をAIに書かせないという警告は、研究に限らず効く。資料を作る工程を丸ごと渡すと、理解していない資料が社内に増える。読む側も作る側も、中身を確かめられなくなる。
my-best.ai 編集部
出典:36Kr「Anthropicの科学者が宣言、世界の博士課程の学生のキャリアが一夜で消滅した」(寄稿:新智元、2026年10月27日)
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本日の36Kr AI版の記事を日本語で整理したものです。最新記事の一覧から他のニュースも読めます。
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