星塵智能が10億元の新ラウンドを完了した。3ヶ月で評価額を50億元上げて150億元とし、2025年の売上約2,090万元で割ると静的PSRは700倍を超える。同じ時期に盈合機器人が破産を宣告されており、資金が一様に冷えたわけではないことが分かる。

なぜこの会社だけ資金が集まるのか
理由は2つに整理されている。1つは量産の実績、もう1つは技術路線の違いである。会社は「繩駆動のAIロボットを量産した世界初の企業」と称し、剛性関節が主流のなかで少数派の方式を選んだ。もう1つは、小売、工業、文化・観光、研究といった現場に実際に納入している点だ。
市場全体の温度も無視できない。2026年上期の国内具身智能分野の調達総額は約935億元で前年同期の約5倍。ただし上位20社が全体の6割近くを占め、資金は集中している。評価の軸も人材やデモから、受注、納品、生産能力へ移った。量産品と実顧客を同時に出せる会社に金が寄る。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 設立からの年数 | 4年未満 |
| 直近半年の調達 | 4回 |
| 3ヶ月の評価額上昇 | 50億元増(100億元→150億元) |
| 2025年売上 | 約2,090万元 |
| 静的PSR | 700倍超 |
| 新ラウンド調達額 | 10億元 |
繩駆動とは何か、なぜ少数派なのか
主流は、電動モーターと波動減速機や遊星減速機を関節の近くに置く剛性方式である。宇樹科技や智元機器人などがこの型で、制御がしやすく、部品の調達も確立している。関節の剛性が高いぶん、姿勢の再現性と耐久の見通しが立てやすい。
星塵智能は、高強度の腱索で関節を引く。人間の腱に近い伝達で、モーターを関節から離して配置できる。腕を細くでき、衝撃を逃がしやすい半面、腱の伸びと摩擦の管理が難しく、制御モデルも重くなる。量産の知見が溜まっていない領域だ。
この路線を選んだ理由を、創業者でCEOの来傑氏は「ロボットが人と同じように働く」という前提に戻るためだと説明する。同氏はTencent Robotics Xの1号社員で、百度の「小度ロボット」チームの責任者を務めた経歴を持つ。中核6人も同ラボの出身である。
なお、繩駆動で知られたFigureはこの方式をすでに断念している。星塵智能は「中国版Figure」と呼ばれたこともあるが、いまは同じ道を一人で歩いている状態だ。技術的な裏付けが取れなければ、少数派であることは弱点に転じる。
700倍という数字をどう読むか
700倍は、現在の事業を説明する数字ではない。将来の量産台数と受注を先に織り込んだ値で、金利や為替の前提も入っていない。同じ上期に、盈合機器人が破産を宣告されている。分野全体の期待値が高いからといって、個別企業の存続が保証されるわけではない。
比較対象として引き合いに出されるのが宇樹科技だ。上場から2ヶ月足らずで株価は1,100元から下落し、一級市場の出資も細った。上場という出口が近づくほど、未上場の倍率は二級市場の評価に引き戻される。150億元という評価額は、次のラウンドか上場のどちらかで検証を受けることになる。
金沙江創投の朱嘯虎氏は、中国には200社以上のロボット企業があり、踊れない会社も拳法ができない会社もない、その大半は10年生き残れない、と述べている。数の多さではなく、現場で稼働している台数が問われる局面に入った。
現場では何が起きているのか
納入先として挙がっているのは、小売、工業、文化・観光、研究の4領域である。いずれも人が足りない、あるいは危険を伴う作業を含む場所だ。ただし、実導入の台数と稼働率は開示されていない。展示や実証と、8時間のシフトで動き続ける運用の間には大きな隔たりがある。
よくある質問
Q. なぜこの会社が選ばれたのか。
公開されている情報の範囲では、量産実績と実導入先の存在、そして技術路線の独自性である。調達額10億元という規模は、量産ラインと部材調達に充てるには十分とは言えない。
Q. 日本企業が導入を検討する場合の注意点は。
実機の連続稼働時間と、腱の交換周期を確認したい。カタログの可搬重量や自由度より、8時間動かした後の再現精度のほうが実務では効く。
編集部の見解
この会社の話は、技術の話というより資金の循環の話である。半年で4回調達し、3ヶ月で評価額が50億元上がる。その速度は事業の進展ではなく、投資家の期待の更新速度に近い。期待が更新されている間は良いが、更新が止まった瞬間に倍率が意味を失う。
日本の製造業がこうした企業を評価する場合、PSRは使えない。使えるのは、稼働台数、連続稼働時間、故障間隔、交換部品の価格である。これらが開示されていない段階では、PoCを自社で回すしかない。
my-best.ai 編集部
出典:36Kr「少数派の星塵智能は、なぜ700倍の売上倍率を支えられるのか」(寄稿:藍媒匯、2026年10月27日)
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